WBAコンサルタント 木村 篤
2023年が始まりました。
新型コロナウイルス感染症の脅威は徐々に和らいできたものの、まだ油断は許されない状況が続いています。
一方、ロシア・ウクライナ戦争によるビジネスへの影響は日に日に強くなってきています。原油高による資材の高騰や納期遅れが解消される目処が立たない状況下にある業界も多いです。
そのような状況で、為替レートが大きく円安に動いたことが大きなニュースになりました。10月には一時的に対ドルで150円まで動きました。現時点(2023年1月)でも130円台と歴史的にみてもまだまだ円安の状況が続いています。資源や食材などを輸入に頼ってきている日本は、物価高に苦しむ結果となりました。
出典:「日本銀行 時系列統計データ検索サイト」
逆に、円安では輸出企業に有利になります。外貨建てでの取引では、円換算で収益が増加します。海外の人からは、日本の製品の円の価格を自国通過に換算すると、日本のものが安く感じられているはずです。おかげで日本に来るインバウンド外国人が増加し、お土産などの購入金額が増加するという好影響をもたらしてくれます。
この円安をきっかけに、今まで進出してこなかった海外市場を視野に入れたいと考える企業が増加しています。ところが、それだけではうまくいきません。たとえ歴史的な円安であろうと、それだけでは売れるようにはならないという現実があります。
理由は、既に以前から知られているブランドであれば、顧客は為替によって購入価格が低下していることがわかるため、今が買い時であることがわかります。しかしこれから初めて展開する企業のブランドでは、それが本当にお値打ちなのかがわからないため、購入の意思決定には繋がりにくいからです。
円安の他の側面に、他国との価格競争において有利になることが挙げられます。低価格を武器に日本製品に対抗して製品開発をしている外国企業は多く存在します。それらの製品群の中で、日本の製品は価格競争力が上がりますが、この面に関しても、やはり製品そのものに認知がなければ、購入に繋がりにくいのです。たとえ購入してくれたとしても、価格だけをみて購入する顧客は、他製品が安くなると、また価格で離れていってしまう恐れがあるのです。
これらのことから、円安であることは既存のブランドを輸出している大企業には輸出の追い風になっても、これから進出する中小企業にとっては十分なメリットとは言えないのです。
結局、海外進出は円安という追い風乗って行うのではなく、どのような為替の状況でも、海外市場を対象にした製品開発、ブランド戦略と、社内体制の構築がカギになってくると言えるでしょう。
それでは、海外進出に向けた第一歩はどのように歩み出したらよいのでしょうか。
ここで、海外進出はじめの一歩のポイントを以下に挙げます。
今回は①の心構えについてお話しします。
心構えとは、そもそもなぜ海外に進出したいのかを今一度自問自答してみることです。
その考え方を5W1Hのフレームで考えてみましょう。
いかがでしょうか。
これらの6つの質問に対してもまだまだ答えがフワッとしてしまうものと思います。ご自分なりに答えを固めることができて始めて、次の準備のステップに入っていくことができるのです。今一度、これらの答えが明確になるまで、じっくりと考えてみましょう。また社長一人で考えず、海外進出に携わる全ての社員の方と一緒に考えてください。社員の方と一体となって取り組んでいく姿勢が大切になってきます。
②事前準備編と③戦略立案については、次号以降でお伝えしていきたいと思います。