WBAコンサルタント 津田 淳
中小企業支援機関の職員として勤務していた私は当時、中小企業の海外展示会出展支援業務を担当していました。
海外展示会のパビリオンを作り、出展企業を募集し、企業の皆様が展示会を通じて販路拡大できるようにサポートする仕事です。
私は機械分野の展示会担当で、マレーシア、インドネシア、タイに年に数回、1週間から2週間程度出張をするような仕事をしていました。そこで築いた企業の皆様との絆は、この仕事の大きな魅力の一つです。
私自身は本質的に慎重派。長時間のフライト、異国の食事や気候、さらには外国人とのコミュニケーションに不安を感じていました。
そんな海外担当となった2年目の夏のある日、上司に呼ばれ突然海外駐在の打診を受けました。私自身全く想像もしていなかった事でした。
私はちょうど3ヶ月もの待ち時間を経てやっと待望の新車が納車されたタイミングでした。家族で遠出したり、キャンプやアウトドアを楽しもうと期待を膨らませていた矢先のことでしたから、打診された海外駐在の話は、私の計画に水を差すものでした。
新車をすぐに売却すれば大きな損失を被ることになりますし言葉も気候も食べ物も苦手。不安な気持ちの強い私は海外に対して苦手意識があり、この提案を断ることにしました。
その日、帰宅してこの話を妻に相談すると、彼女は意外な反応を見せました。
「一生に一度のチャンスなんだから、行ってみようよ。」
という彼女の言葉に、私は心動かされました。
確かに、海外での生活は苦手意識があるものの、このようなチャンスはそうそう訪れるものではありません。
「それもそうだな、一生に一度だけだし、成長できるチャンスかも知れないな。挑戦してみよう!」と心の中で叫び、海外駐在を受け入れることにしました。
妻の提案を受け、私は自分の恐れや不安を乗り越えることを決心しました。
この決断は、私にとって大きな転機となりました。 その時、私はまだ想像できませんでした。この旅が、私と私の家族にどのような影響を及ぼし、私たちの人生に何をもたらすのか。これから私たちが直面するであろう挑戦の全貌を。
今振り返ると、この決断が私たち家族にとってどれほど価値のあるものだったかがわかります。しかし、良い面ばかりではありませんでした。ただ言えることは、海外での新しい生活は、私たちを一つにし、家族の絆を深める事になりました。そして海外での日々は、私たちにとって挑戦の連続でしたが、それと同時に成長と発見の旅でもありました。